Tuesday, February 28, 2006

アフォーダンスの選択について

ヒトは、環境にあるアフォーダンスを選択し、意味づけを行い、行動を起こす。
この行動を起こすことにより、現在の環境とは異なる環境へ移行する。
このように、ヒトは行動をおこし新たな環境への移行を行いながら、その環境に適応するように進化していく。
チャンスを発見することもヒトが異なる環境へ移行する大きな要因の一つとなる。
チャンスというアフォーダンスを選択するヒトは、独自の着眼点をもっているようである。
それでは、組織のなかで独自の着原点を生み出す手法はあるのだろうか?
できるだけ、組織の多くのヒトがチャンスを発見する着眼点に気付き、その気付きを組織の中に伝播できると、
チャンスを発見し、チャンスを生み出す組織となる。
そのためには、一度原点に戻り実験のフレームワークを組みなおしたいと考えている。
グループで、ある題材について議論をするにあたり、題材の核となる事象の写真を複数準備し、その複数の事象との関係性について想起できる写真を事象間に貼り付け、そのシナリオを説明する。その操作を参加者で何度も繰り返す。その作業の中で、参加者が不適切であると思える写真があれば、削除または適当と思える場所に移動する。
このように、参加者全員が合意できるような状態まで議論を重ねて、最終的に合意した配置から、核となった複数の事象間の関係を示す写真の中で、稀な事象で特徴のある写真を探し出す。
その写真が、まさに参加者独自の着眼点と思われる。
この仮説の元、数度実験を繰りかえし、独自の着原点の発見方法とその着眼点が生まれる過程を分析する。

WESEAS`06 の原稿

Title:Products Designed on Scenario Maps using Pictorial KeyGraph
Abstract: - We developed a method of teamwork for a product design in a real manufacturing company, where Pictorial KeyGraph aids in the creative consensus of team mates. In Pictorial KeyGraph, photographs of real entities corresponding to incomprehensible items in given data are embedded to the visual result of KeyGraph applied to their business reports, by users with tacit and explicit expertise in the real world of business on the way of the communication for designing a product. In their communications, novel and practical scenarios of product behaviours were extracted, and 5 new patents have been applied. Behind this success, we found evidences that the team members tend to combine established concepts via rare words in creative designing: First pay attention to popular concepts in their business reports, appearing as islands in KeyGraph. Then, they calm down to speak less, and finally produce new scenarios by connecting islands via items lying between islands in KeyGraph.

新しいアイデアの着眼点とは

人によって新しいアイデアを次々に創出する人と殆ど新しいアイデアを作り出せない人がいます。
組織内部では、全員がアイデアを創出する人ばかりでは発散ばかりして収集がつかなくなり困ります。アイデアを収束し、実務に適用できるものに絞込み、製品化し市場に投入し、その反応に応じて更に改善・改良を加える。この一連の流れは、まさにチャンス発見の二重螺旋のプロセスです。
では、新しいアイデアを創出する人と創出できない人との違いは何でしょうか?
昨晩、社内でのワイガヤ会議の後の飲み会でそんな話になりました。
新しいアイデアを創出する人は、世間一般で言われている人の評価(頭が良い、格好が良い、インテリである、常識がある、IQが高い、人付き合いが良い、など)に対して全く気にしていない。その人独自の価値観を持っている人が面白いアイデアや新しいアイデアを創出することが多いとの意見にまとまりました。これを、更に掘り下げて考えると、我々の環境の様々なアフォーダンスを自己が培ってきた経験や知識などに基づいて選択する場合に、常識的な概念しか持ち合わせない人、または経験や知識が不足している人は、着眼点が少ない又は限定されているために、新しいアイデアが生み出せないのではないかと思われます。ただし、知識や経験が少ない若い人が、何故新たなアイデアを生み出せるかというと、経験や知識が不足しているために、知識や経験のある人が捨てたり、無視していたアフォーダンスに着眼点を置くためであると考えられます。
この事からも、KeyGraphやHuman Interface Anealing(HIA)のようなアプローチで重要な事象を結ぶ稀であるが関係性に影響を与えるアフォーダンスに如何に着眼点を向けるかが、新しいアイデアを創出する重要なアプローチであると再確認しました。

Sunday, February 12, 2006

アフォーダンス理論と実験条件について

最近、「アフォーダンスの心理学(生態心理学)」に関連した書籍を読んでいますが、Edward S. Reedの「アフォーダンスの心理学」に記述されていた臨床心理学のロールシャッハテストでは、被験者にはっきりした構造のない図を提示して、そこにどのような秩序を読み込んだかということから、被験者の心理的な過程の経緯と図からどの様に意味を構成したかが分かる。また、Shepardの「刺激図の心的変形」の実験で、提示される刺激図はある構造をもつが、そこになにか特定のものが欠けているので、被験者は欠けている特定のものを構成することを求められる。(Shepard、1982) また、ある実験では図形が特定の起動で動かされるが、被験者はその終点しか見ることが許されないので、被験者は残りの軌道を自分で「補完」する。これは、心理的な過程の機能とは、構造や意味が無い状況に構造や意味を付加することである。この考えは、John Stuart Millの「推論」の概念(John Stuart Mill,1843/1981)、そしてその概念を受け継いだヘルマン・フォン・ヘルムホルツの「無意識的推論」へと引き継がれている。従来の認知心理学では、「刺激ー反応」という枠組みで捉えている。J.J.Gibsonは、環境に実在する、知覚者にとって価値のある情報を「アフォーダンス」と名付け、動物は情報に反応するのではなく、情報を環境に探索し、知覚・発見し、行動の判断基準として位置づけ、意思決定を行い行動すると提唱している。

KeyGraphのグラフ図の解釈の容易さ段階を確認するために、クラスターの数を増やした複数のグラフ図を被験者に示し、各々解釈を行わせ、解釈しやすい図を選定させる実験を行う予定である。
この「アフォーダンスの心理学」から考えると、被験者が、グラフ図に現れる高頻出度単語やクラスターの位置が各々の図で変わることにより、解釈の容易さの判断に影響が出るのを避けなければならない。そのためには、ある程度高頻出度の黒ノードやクラスターの位置を固定する必要がある。
それにより、被験者の注意点が新たなクラスターやそれを結びつける赤ノードの出現による差異を感じた上で、解釈の容易さを知覚してもらうのが良いのではないか思う。

Tuesday, February 07, 2006

IPMUでの発表予定の論文

10月にパリで開催されるIPMUで発表予定の論文について概要を以下にのせます。

Title
Emerging High Quality Scenarios in Manufacturing Organization with Chance Discovery Method

Abstract
We adopted the “Chance Discovery Double Helix Loop Process” with KeyGraph for our business application. It is, however, neither easy for examinees to interpret the context of KeyGraph nor to create new proposals. We created “Scenario Map” which adhere photograph of unidentified defects to near by name of Red nodes on KeyGraph and facilitated them to understand the context of “Scenario Map” through group discussion. 11 new practical scenarios were extracted and 5 new patents can be applied from one of these new scenarios as business achievement.
In this study, it is observed that Red nodes, which is rare events named as bridge among clusters of black nodes and links named as islands in “Scenario Map”, were adopted to emerge these new scenarios. We concluded that the Red nodes are performed to integrate fragmented knowledge, interest, know how, etc. in examinees` mind and externalize them into a linguistic form.

1月24日の人工知能学会での発表

今年の1月24日に慶応大学の日吉校舎で開催されましたKBSE2005 知能ソフトウェア工学で以下の論文を発表しました。
タイトルと概要を以下にのせます。

タイトル
製造業における組織的チャンス発見によるデザイン事例
?合意形成過程における質の高いシナリオ創発のプロセス?

あらまし
企業において市場における顧客の需要を把握し、その需要を満足させる製品の開発を行う事が使命であり、企業が継続的に競争力を維持するためにも重要な活動である。弊社においても、取り扱っているリニアCCD表面欠陥装置に関する重要な顧客を訪問しながら要望を聞きだし社内においてその要望を満足させる製品の開発について日々議論をしている。しかしながら、顧客訪問後の営業報告者などのテキストデータに基づいて営業マネージャーや担当者が議論をしても具体的な製品開発に中々結びつかないという課題がある。その課題を解決するために、チャンス発見の二重螺旋のプロセスを取り入れ、グループディスカッションを試みが、KeyGraphで処理したグラフ図のコンテクストを解釈し、新たなシナリオを創発することができなかった。その為、KeyGraphにて出力されたグラフに現れた欠陥の近傍に対象となる写真を貼付するシナリオマップを作成したところ、コンテクストの解釈が容易になり質の高い新たなシナリオを抽出することができ、実務的な成果として新たに5件の特許申請を行うことができた。本研究では、このような新たなシナリオが抽出されたプロセスにおける特徴を分析し、そのメカニズムについて考察した。

Sunday, February 05, 2006

アフォーダンス理論とチャンス発見について

アメリカの認知心理学者のジェームス・ギブソン(James J. Gibosn)が、1960年代に完成した「アフォーダンス理論(エコロジカル・リアリズム:生態的実在論)」は、現在「人工知能の設計原理」や「人と機械のコミュニケーション」について認知科学者に注目されている理論である。
アフォーダンスとは、ギブソンが作った造語であるが、由来は良いものであれ、悪いものであれ、環境が動物に提供するために備えている「価値」のことである。事物の物理的な性質や知覚者の主観が構成するものではない。環境の中に実在する、知覚者にとって価値のある情報である。
ヒトは環境にあるそのアフォーダンスを探索し、知覚している。
ヒトが、一度しか行った事が無いような複雑な道をナビゲーションして目的にたどり着くことをするような場合、移動しているヒトが利用しているのは、移動に伴って現れる「ナビゲーションのアフォーダンス」である。ナビゲーションのアフォーダンスの一つの候補は、「ルートとルートのつながり目の見えが、移動に伴ってどの様に変化するのか」とい情報であることが明らかにされている。これは、「視るシステム」以外に「聴くシステム」などでも知覚できるアフォーダンスである。
盲人は、ルートとルートとのつなぎ目の「ひらける感じ」や「圧迫感がなくなる感じ」から転回点を知覚し、次のルートを決めている。
このように、ルートとルートをつなぐ個々の転回点は、移動にともなう動きの中に現れる独特の「変化」により、それ自体は形を持たない「変形の姿」や「異質性」から知覚される。
チャンス発見において、KeyGraphのグラフ図に表れる、稀な表出語であるが、高頻度語の塊でそのデータの主張を示す概念の島と他の概念の島とを結ぶ赤ノードの橋が、まさにこのアフォーダンス理論における変化において現れる「異質性」、すなわち「チャンス」を発見するための転回点と言えよう。

多くのナビゲーション研究では、表現されたものがそのまま「頭の中の地図」、「こころの表像」として存在し、ナビゲータは、実際のナビゲーションでもそれを参照しながら目的地に移動していると考えてきた。認知地図の研究者は、「ナビゲーターが見る環境には、目的までの道しるべを示すものは僅かしかない。だから個々の地点での見えをつなぐ地図がいるはずだ」と考え構想してきた。しかし、実際の世界においては「転回点」のなかにナビゲーションを可能にしている十分な情報がある。ナビゲーターがしていることは、それを知覚しつつ移動することであり、「地図」を思い浮かべてそれに従う事は無い。この理論から考えると、チャンス発見において探索された「チャンスへのシナリオ」を行動に移す時には、KeyGraphのグラフ図という「表現」を思い浮かべるのではなく、「転回点」である「赤ノード」を
不変項の「情報」として知覚し、行動に移しているいえる。

この理論をベースにヒトがチャンスを発見したり、新たなシナリオを創発させるようなナビゲーションシステムのデザインを考える場合、環境における事象と事象の転回点である異質性を知覚させるために、その異質性を示す動きや変化を強調する必要があると考える。
また、その異質性をどの様にデザインするかも重要な課題である。従来のKeyGraphの赤ノードだけでなく、データクリスタライゼーションのようなデータには現れないダミーノードを挿入し、変化を強調する手法も非常に効果があると考える。