Saturday, March 10, 2007

「絵文」:画像の文脈付加について 

人が、画像をみて感じるイメージに基づいて言語化し、その言語をシナリオとして創出することにより画像に文脈を付加することができる。それを「絵文」と仮に呼ぶ。
「絵文」によって、その画像に対する人それぞれの文脈の共通点と差異が明確にし、その共通点と差異が何故発生するのかを分析することに興味を感じている。
人が同一の画像を見て、共通な文脈を創出するのは画像のある共通部分に注力して、共通の知識や経験から解釈して言語化しているからである。
しかし、同一の画像をみて差異が生じるのは、他の人が注目していない画像のある部分に注意を促し解釈をする場合と、他の人と同じ部分に注目をしているが知識や経験が他の人と異なり異なる文脈を創出することが考えられる。
この画像の異なる部分への注目と異なる経験や知識による、異なる文脈の創出は新たな創造への契機になると期待できる。
製品のデザインを考える場合、要素、機能、目的に従って造形することになる。

新たな製品をデザインするための従来の研究成果では、「顧客のクレーム報告書」や「顧客のサンプル評価実験報告書」などのテキストデータをKeyGraphで処理した後の関連する単語に写真を貼付したシナリオマップを作成し、そのシナリオマップのコンテキストを解釈する過程で、高頻出頻度の単語付与された黒ノードと共起性の高い黒ノード間を結ぶリンクが形成するクラスター間を橋渡しする低頻出頻度の単語に付与された赤ノードの解釈を契機に新たなシナリオが創出されることが発見された。
また、新たな製品をデザインするために、特許テキストデータにData CrystallizationとHuman-Interactive Annealingのアルゴリズムとプロセスを応用した。Data Crystallizatio のアルゴリズムにより、特許テキストデータに存在しないダミーノードを自動的に投入し、Human-Interactive Annealingによて共起性のある技術データの塊(クラスター)を人が理解できる程度に分類して示し、クラスター間の非常に薄い関係性をダミーノードで示すことにより、新たな技術の組合せによる新たな製品概念のシナリオを創出することができた。
今までの研究成果を振り返ると、コンピュータのデータ処理によって可視化された稀な事象や異質な事象により、被験者が顧客のデータや現場での経験や情報において、全く又は、ほとんど注目していなかった事柄との関係性に気づいて新たな視点でシナリオを創出することができたと考える。

この仮説を更に実証するために、上述の絵文による差異の抽出と気づきが、人の創造性にどのように効果があるのか実験したいと思う。絵文の差異を抽出する方法を確立することにより、新たな視点に気づく補助線を人に示すことが可能になるのではないだろうか?
この絵文による補助線によってシナリオを創出することが可能になり、さらにシナリオから複雑で新たなデザインを創発することが可能になるのではないだろうか?
人の言語化できていないイメージや感覚をいかに言語化させるか、次にその言語化されたものから異質なものを抽出又は、加えることにより新たなシナリオを創出させる。さらに、そのシナリオから新たなデザインを創発させるというプロセスを組み立てて見よう。

Sunday, March 04, 2007

テーマに沿った写真の収集と写真の関係性からデザイン文脈を創造する


現在、新製品のデザインに関するシナリオをどのようにスケッチなどのデザイン図に落とし込むかについて検討している。

先行研究によれば、「事例に基づくデザイン支援と評価基準の構築」(片寄’03)によれば、コンテンツ制作例として、事例にもとづ推論法(CBR)にのっとり、演奏の生成、絵画制作、造詣支援を取り上げ、見本や素材に変更を加えて作品を完成させる簡便な手法が大いに利用されていることが指摘されている。また、コンテンツを基本構造(骨格部分)とElaboration(具体化、詳細化)に分けた場合、簡便なコンテツ制作手法として基本構造はそのままで、Elaborationの部分のみ変更を加える手法が有効であると提案されている。
コンテンツを魅力的なものにする特質のひとつに創造性が上げられる。”Creative Cognition" (Finke’92)では、創造過程が創作の前段階構造を生成するフェーズと、創作の前段階構造をさまざまに解釈する探索フェーズからなるとしている。
FinkeのGeneplore Modelを片寄の提案方法に当てはめると、Elaborationの部分で創造性を発揮する比率を大きくすると簡便さを失い、簡便さを追求すると創造性を発揮しにくくなるというトレードオフの関係が課題としてあげられる。

一方、デザインは、要素、機能、目的を統合してコンテンツや造形を作成するものと定義できる。
”A Framework that supports Collective Creativity in Design using Virtual Images"(Nakakoji,K., et al.’99)にて、デザイン支援にはPhotoshopやIllustratorのように、ユーザーには解生成のためのプリミティブを提供する手法や、ユーザにとって発想のヒントになるであろう刺激データを提示する手法の提案がある。発想のヒントとなる画像データの提示において、デザインの発想にはデザイン知識の文脈性、信頼性、作業への没入感が重要であるといわれている。
”Towards More Creative Case Based Design Systems"
(Wills、’94)では、創造的なデザイン支援に関して、問題の多面的な記述、評価の繰り返しによる問題詳細化と理解の深化、問題が発生している文脈に則した事例検索、柔軟な思考戦略を実現するにも事例に基づく推論(CBR)が利用できるとしている。
ただし、"Case-Based Reasoning-Survey and Future Directions",(Bartsh-Sporl,'99)
では、ケース事例に基づく推論法(CBR)は、もともと閉じた状況における定型問題を解くための枠組みとして提案されたものであり、デザインのような生成的な応用にはあまり成果が出ないとしている。その主因として事例格納文脈と事例検索、再利用の文脈が異なる点が上げられている。
つまり、創造的なデザイン用途においては、事例が将来検索、再利用される文脈を格納時に完全に予測することができない。この問題を根本的に解決するには、デザイン活動を行う対象のコンテンツの知識表現の問題に取り組む必要がある。


一方、Web上の画像やテキストを対象としたシステムを概観すると、Hunter GatheretoCollage Machineがある。
Hunter Gathereは、Web上の画像やテキストの必要な部分だけを非常に簡単な操作で切り貼りするシステムである。(Schraefel、’01、Schraefel’02)
Collage Machineは、Finkeらの”Creative Cognition”(Finke,'92)の理論の基づいき、ユーザーが嗜好するWeb上の画像やテキストを自動的活継続的に集めコラージュを作成するシステムである。(Kerne,'00,Kerne,'01) コラージュは、モノを置く文脈を再定義し直してそこに新しい意味を生み出すことであり、現代芸術での基本テクニックの一つである。創発的、偶然的なコラージュがユーザの新しい発想を促したり、コラージュ自身が作品となる場合がある。Collage Machineは、ユーザーとの対話を通して、ユーザーの嗜好に適応する。

イノベーションのためのキューブのワークショップが開催されました

本日、東京大学(本郷)の工学部2号館212号室でイノベーションのためのキューブと題してワークショップが開催された。
イノベーションを工学的な視点で定義しなおすというあらたな試みで、スロベニア、シンガポール、アメリカ、中国の著名な大学教授が集合し、日本からも京都大学、筑波大学、東京大学からスピーカーが参加した。

イノベーションとは、ユーザにとって恩恵のある新規性と定義された。
東京大学大澤助教授より、イノベーション(I)、デザイン(D)、コミュニケーション(C)という3つのキューブの視点で捉え、各々を組み立てるシステムプロセスを開発するために各々の分野で権威ある研究者が意見を交えていくワークショップであるとの説明があった。

Organized Workshop"Cubes for Innovation: Information Systems for Design and Marketing"
Co-sponsored by University of Tsukuba and IEEE SMC Japan Section
DATE: 3 March (Saturday), 2007
VENUE: Lecture Hall 212, Engineering Building 2,The University of Tokyohttp://www.t.u-tokyo.ac.jp/etpage/access
Sponsors:IEEE SMC Society, Japan SectionTechnical Committee on Information Technologies forDesign and Marketing, IEEE SMC SocietySchool of Business Sciences, The University of Tsukuba,
Scope: Three cubic building blocks of systems innovation in businessare discussed. I-cube is focused on the cognitive aspect of systematic thinking for innovations. D-cube is focused on data-based decisionsapplied to realize creative marketing and designs. Data visualizationtechniques are presented as a promising bridge to connect D-cube andI-cube. C-cube is focused on the communications in a creative humangroup. We present each speaker's study and exchange informal ideas about the three cubes, in order to develop a systematic process to innovation by combining I, D, and C cubes.

10:00 INTRODUCTION AND WORKSHOP SCOPETri-Cube Building Blocks for Systems InnnovationYukio Ohsawa, The University of Tokyo
Session 1) 10:30-12:30 I-CUBE : INSIGHT, INVENTION, and INNOVATIONInnovation and Systems ThinkingMatjaz Mulej, University of Maribor, SloveniaChance Discovery for Cognitions in Systems DesignYukio Ohsawa, The University of Tokyo, Japan
Session 2) 13:30-15:30 D-CUBE: DISCOVERY, DECISION, and DESIGNData Crystallization and Applications to Design and ArtYoshiharu Maeno, University of Tsukuba, TokyoFrom Visualization on the Sphere to Opinion Mining and AnticipatoryEvent DetectionChang Kuiyu, Nanyang Technological University, Signapore
Session 3) 15:40 - 18:40 C-CUBE: COMMUNITY, CONSENSUS, and CREATIVITY Metasynthesis Toward Complex Problem SolvingXijin Tang, Chinese Academy of Sciences, ChinaConsensus Supports in Decision Making GroupYasuyuki Sumi, Kyoto University, JapanInformation Technologies for Supporting Human Innovation andCreativity: The Evolutionary PathXavier Llora, University of Illinois, USA