「絵文」:画像の文脈付加について
人が、画像をみて感じるイメージに基づいて言語化し、その言語をシナリオとして創出することにより画像に文脈を付加することができる。それを「絵文」と仮に呼ぶ。
「絵文」によって、その画像に対する人それぞれの文脈の共通点と差異が明確にし、その共通点と差異が何故発生するのかを分析することに興味を感じている。
人が同一の画像を見て、共通な文脈を創出するのは画像のある共通部分に注力して、共通の知識や経験から解釈して言語化しているからである。
しかし、同一の画像をみて差異が生じるのは、他の人が注目していない画像のある部分に注意を促し解釈をする場合と、他の人と同じ部分に注目をしているが知識や経験が他の人と異なり異なる文脈を創出することが考えられる。
この画像の異なる部分への注目と異なる経験や知識による、異なる文脈の創出は新たな創造への契機になると期待できる。
製品のデザインを考える場合、要素、機能、目的に従って造形することになる。
新たな製品をデザインするための従来の研究成果では、「顧客のクレーム報告書」や「顧客のサンプル評価実験報告書」などのテキストデータをKeyGraphで処理した後の関連する単語に写真を貼付したシナリオマップを作成し、そのシナリオマップのコンテキストを解釈する過程で、高頻出頻度の単語付与された黒ノードと共起性の高い黒ノード間を結ぶリンクが形成するクラスター間を橋渡しする低頻出頻度の単語に付与された赤ノードの解釈を契機に新たなシナリオが創出されることが発見された。
また、新たな製品をデザインするために、特許テキストデータにData CrystallizationとHuman-Interactive Annealingのアルゴリズムとプロセスを応用した。Data Crystallizatio のアルゴリズムにより、特許テキストデータに存在しないダミーノードを自動的に投入し、Human-Interactive Annealingによて共起性のある技術データの塊(クラスター)を人が理解できる程度に分類して示し、クラスター間の非常に薄い関係性をダミーノードで示すことにより、新たな技術の組合せによる新たな製品概念のシナリオを創出することができた。
今までの研究成果を振り返ると、コンピュータのデータ処理によって可視化された稀な事象や異質な事象により、被験者が顧客のデータや現場での経験や情報において、全く又は、ほとんど注目していなかった事柄との関係性に気づいて新たな視点でシナリオを創出することができたと考える。
この仮説を更に実証するために、上述の絵文による差異の抽出と気づきが、人の創造性にどのように効果があるのか実験したいと思う。絵文の差異を抽出する方法を確立することにより、新たな視点に気づく補助線を人に示すことが可能になるのではないだろうか?
この絵文による補助線によってシナリオを創出することが可能になり、さらにシナリオから複雑で新たなデザインを創発することが可能になるのではないだろうか?
人の言語化できていないイメージや感覚をいかに言語化させるか、次にその言語化されたものから異質なものを抽出又は、加えることにより新たなシナリオを創出させる。さらに、そのシナリオから新たなデザインを創発させるというプロセスを組み立てて見よう。