Tuesday, January 03, 2006

2006年1月1日フジサンケイに掲載 大澤助教授の「データ結晶化技術」

東大が新データマイニング ヒット商品・カリスマまでピタリ
FujiSankei Business i. 2006/1/1  TrackBack( 4


 初夢ではない。これは、未知の世界を拓く現実の開発だ。  企業が応用すれば、ヒットにつながる新商品を「無」から生み出せる可能性が広がる。商談やビジネスを有利に運ぶ、黒幕や、カリスマのあぶり出しにも効力がある。  そんなコンピューター分析技術が米空軍の協力を得て、東京大学大学院工学系研究科の大澤幸生(ゆきお)助教授と筑波大学大学院学生の前野義晴氏の手で開発されたのだ。  会議などの記録を基に「出席していないが陰で指示している人物」を浮かび上がらせるコンピューター分析技術で、議事録にまったく登場しない人物であっても「いるはずだ」と推測できるようになる、という。  大澤助教授らが開発したのは、企業が商品の売れ行きを探る手法として注目している「データマイニング」と呼ばれる技術を進化させたものだ。  その人物がいつ、どこで、どのような発言をしたかが予測でき、人物像にも迫ることが可能。今後、米軍が提供するシミュレーション用のテロリストデータを使って性能を検証する。  今までのデータマイニングは、会議の参加者のなかで話題の中心にいる「いかにもリーダーらしいリーダー」を見つけ出すことなどを得意としていた。  これに対して、多くのデータから、まだ発生していない未知の事象も導き出せるのが今回の技術だ。すべての会議にもう一人の人物がいると仮定し、ダミーの人物をコンピューター上に設定することでデータを可視化。このダミーと会議の出席者との関係を分析によって再現し、「ダミーの人物が実在するらしい」と判断する仕組みだ。  しかも、ダミーが、出席メンバーの誰とどのようにかかわっているかを推測できる。議事録から削除した人物や、本来会議に出ていてもおかしくない遠隔地などで指示している黒幕まで浮き彫りにできる。  大澤助教授は、「まだ世の中にないが、あれば売れるものや、今後、流行発信源となるカリスマを予測することにも利用できる」と期待している。                   ◇  ■ビジネスの勝敗握る開発  一連の耐震強度偽装事件で、さらに黒幕となる人物はいるのか。新開発のデータマイニング技術により、「関与した人物の会議内容が分かれば、探り当てることができる」と大澤助教授はいう。  新技術は、会議などの記録から「削除された人」や、まだ起きていない未来を予測でき、データマイニングの可能性を切り開くものといえる。  大澤助教授の過去の研究では、スーパーで菓子パンや総菜を買う人(独身)はビタミン剤を買うというような現象を発掘し、売り上げ向上に役立てている。  さらに、新技術では、ビタミン剤という概念がない場合でも、そうした栄養補助剤のようなものが売れそうだというビジネスチャンスを見つけ出すことができ、企業のマーケティング戦略における有力なツールとなりそうだ。  今後、無線ICタグ(電子荷札)などのさまざまなセンサーが身の回りに配置され、人間の行動記録がコンピューターに取り込まれていくという、ユビキタス社会が到来する。  このような“データの山”から、どれだけ有用な情報を掘り出せるかという「データマイニング能力」が、ビジネスの勝敗を分ける時代が到来した。(原田成樹)                   ◇ 【用語解説】データマイニング  大量のデータをコンピューターで解析し、その中に潜む項目間の相関関係やパターンなどを探し出す技術。購買履歴や顧客データを「鉱山」とし、金脈となる潜在市場を「採掘(mining)」する。米スーパー最大手ウォルマートが、レジの記録から紙オムツとビールを同時に購入する顧客が多いことを発見し、近くの売り場に並べて売り上げを伸ばした事例は有名。

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