アメリカにおける経営者報酬ーストックオプションの視点からー
今日は、日本学術振興会経営問題第108委員会の第二回公開セミナーが丸ビルで開催されたので、第一回に続いて参加してきました。
ミシガン大学 客員研究員 吉田 博さんから、アメリカにおける経営者報酬について研究発表がありました。アメリカでは、経営者の巨額なストックオプションや退職金が問題になっています。
株主にとって、経営者は資本コスト(WACC)を上回ると予想される投資の実行を行い、予想された投資利益の実現により企業価値が増加し、株主価値が創造される。その株主価値の最大化を図る為に、経営者への動機づけのために株主価値創造にリンクした報酬としてストックオプションの供与が考えられた。ストックオプションの効果は、リスクを取らなければ株主価値を創造できないためである。
しかし、課題は、ストックオプションには経営者にとってダウンサイドリスクが無い為、経営者が過度のリスクを取り、株主価値を破壊する恐れがある。そのため。経営者に現物の株式保有をさせ、過度なリスクを取ることを回避させることが実施され始めた。Eastman Kodak, Campbell Soup, Exoon Mobile, GMなどの大企業では経営者の収入の1から16倍の株式保有を義務つけている。
吉田氏は、株主価値と最適報酬制度のモデルを作り、検証している。
株主価値の創造(ΔV)は、経営者の努力(E)の関数と仮説し、
ΔV=f(E) ???(1)
ストックオプション・株式保有比率(SOR)=経営者のオプション保有数/経営者の自社株保有数?(2)
経営者の努力(E)は、インセンティブ関数
E=SORx(α - SOR)???(3)
α:経営者の目標SOR
ΔV=f(E)=β・E+γ ???(4)
(3)を(4)に代入して、
ΔV=?βSOR2 + αβSOR+ γ
という最大値を持つ負の2次関数となる。
このモデルを、S&P80社の2001年から2005年の株主価値と経営者のストックオプション数、株式保有数を当てはめると、ストックオプション数、株式保有数の偏差より小さい数値を示した。しかし、R2値が0.2と有意ではないので、更なる検証が必要との報告であった。
この報告から、米国も徐々に日本の取締役が、一度退職し、退職金で株式を保有すると共にストックオプション報酬制度を兼ね備えている日本の制度に近づいているように受け止められた。
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